ある娘さんの8年後



 机の奥で何年も眠っていたアドレス帳をめくる音だけが、一人になった部屋の中にゆっくりと響いている。
 あれから8年、『彼女』とは会っていない。
 『彼女』の姿を探しては、一喜一憂していた当時が、まるで自分の頭の中にある想像だったのではないかと思ってしまったりもする。
 もちろん、『彼女』がいたあの時が、私の想像の産物じゃないことは、今も一枚だけ手元に残っている写真が証明してくれている。
 就職が決まって家を出る時、荷物の整理と一緒に、あのころの写真はほとんど家に置いてきてしまった。別に深く考えてのことではなかった。もう過去だけを大切にする年でもなかったし、正直、一人暮らしと今後の仕事のことで頭が一杯だった。
 ただ、今も残っている写真だけは、わざわざ着払いまで指定して友人に送ってもらったものだったし、一枚くらい高校の卒業式の思い出は残すべきだ、なんて思った気がする。

 あのころは、なんの躊躇いもなく『彼女』だけを追い求めていたけど、私がそういう質の人間なのか、正直自分にもよく分からない。
 ただ、あれから何人か、恋人と呼べる人と付き合ってきた経験から言えることは、私は男よりも女の方がイイらしい。
 実際、ついさっき別れの言葉を告げた為に、この部屋から泣いて出ていった相手は、うちの会社に派遣で来ている2歳年下の女の子だった。
 仕事でもプライベートでも、とにかくあの子は、今まで付き合った中では一番かわいい子だった。
 綺麗に肩口で切りそろえられた髪は、腰までの伸びた艶のあるロングだった『彼女』とは正反対だったけど、それ以外の印象はとても似ていた。

 女も初恋の相手をいつまでも忘れないのか、それとも私の好みの問題なのか。『彼女』にどことなく似ている女の子ばかりと、私は付き合ってきた気がする。
 あの子は私より15センチも高い身長をいつも気にしていたけど、私は逆に自分より背の高い女の子の方が好きだった。
 キスするとき、私は胸を張り、あの子は頭を下げるから。

 そんなあの子と付き合って分かったことがある。
 『彼女』はかっこいいというよりも、かわいい部類に入る女の子だった。
 あの子を見る度に、『彼女』が重なって見え、あの子のかわいさが、当時の私が気付きもしなかった『彼女』のかわいさを教えてくれた。
 8年掛かってようやく、私は『彼女』を愛したいと思った。
 憧れでもない。眺めているだけでは満足じゃない。
 正直、欲望を隠さずに、「貴女を抱きたい」と面と向かって言ってもいい。
 きっと『彼女』は困った顔をして、それでも断りきれずに、押し流されてしまうかもしれないのだ。

 ようやく、探していた電話番号を見つけた。
 迷う事なんて何もない。私は携帯に懐かしい番号を打ち込むと、相手が出るのを長い時間のように感じながら待った。
 ──はい、もしもし。
「あ、ちよちゃん? 久しぶりー。かおりだけど、榊さんの連絡先って覚えて──」


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戯れ言

あずまんが大王の、かおりん×榊さん百合SSです。
……って、なんじゃこりゃーΣ(゚д゚lll)
仕事のマニュアル作成をしようと、エディタを立ち上げたのに、2時間後にはこんな結末を迎えるなんて……。
ほんと、人生って波瀾万丈だね。
あ、ちなみに、私はアニメ版あずまんが大王みてから、「ちよすけ×榊さん」もいいかなーと思ってしまっているので、この話の続きとしては、実はちよすけと榊さんが同棲していて、そこにかおりんが乱入、修羅場に突入ってのを希望してます(;´Д`)

2002/11/05 21:37

追記
そして、今だにネットに上げる準備をしたりしていて、仕事のマニュアルは一文字も作成していない私。万歳。

2002/11/05 22:27